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森・海・農・まちを包摂する協同のビジネス創出〜地産地消運動促進ふくしま協同組合協議会〜

 去る11月29日(金)、 摺上亭大鳥を会場に、「2019年度絆シンポジウム」が開催され、地産地消ふくしまネットの構成団体を中心に、150名が参加されました。

 今年度のテーマは「“森・海・農・まち”を包摂する協同のビジネス創出〜ふくしまSTYLEのSDGs〜」としました。

 開催趣旨を以下の通りとしました。

 「東日本・津波・原発事故大震災から8年半を迎え、復興と地域再生のあり方が問われ、地域自立が差し迫った課題になっており、本協議会でも正面から議論を重ねてきている。全国の協同組合ではSDGsを掲げ、それに呼応して、本協議会では、ふくしまSTYLEのSDGsは、森と海と農とまちで協力して、誰も取り残さない地域復興をめざすことにあると昨年開催の絆シンポジウムで確認したところである。

 そこで、今回の絆シンポジウムと絆塾では、森・海・農・まちの協同組合や協同組合を支援する団体が協力して、協同のビジネスを創り出し、地域が主体となった福島の復興をめざしていく具体的な実践課題を議論する。

 絆シンポジウムでは全国の事例から学び、地産地消ふくしまネットの挑戦課題を語り合う。二日目は絆塾を開催し、今年からどのようなことに取り組んでいくかワークショップ形式で考え具体案を出す。」

 冒頭、主催者を代表して、地産地消ふくしまネットの菅野孝志会長(福島県農業協同組合中央会会長)より挨拶があり、「ふくしまSTYLEのSDGsをめざす地産地消ふくしまネットの役割」と題して、地産地消ふくしまネット副幹事長である福島大学食農学類小山良太教授より、シンポジウムに当たっての解題がありました。

 第1部基調講演では、「協同組合間協同とSDGs〜誰も取り残さない持続可能な地域づくり」と題して、かつて、地産地消ふくしまネットの特任研究員であった日本協同組合連携機構(以下「JCA」という)基礎研究部副主任研究員である阿高あやさんから講演をいただきました。

 阿高さんからは、「SDGsの歴史」や「SDGsと協同組合の親和性」についての説明があり、SDGsの目標達成のためには、未来の望ましい姿を起点に逆算して今何をすべきか考えるべきだとの指摘やSDGsのベースは人権尊重にある。達成のために働き方改革や女性の活躍が関わってくるとの話をいただきました。

 第2部では、福島大学の小山ゼミナールの学生たちから「福大発の米づくりから日本酒づくりへ」、林ゼミナールの学生たちから「森と海と農をつなぐ地産地消メニュー」の各実践報告がありました。

 その後、福島大学食農学類林 薫平准教授がコーディネーターとなり「福島で森・海・農・まちをつなごう」をテーマとしたパネルディスカションが行われ、パネラーである古殿町水野林業の水野廣人氏より「古殿杉の食器づくりから、馬を活用した里山保全と都市農村交流への挑戦」、福島水産株式会社守山幸志氏より「福島に県内産の水産物を普及する取り組み」、有限会社降矢農園降矢和敏氏より「放牧養豚、ワイン用ブドウ、フードフェス」、JAふくしま未来高野優花さんより「まちの中に、”農“ある場をつくる〜みらいろ女子会とアグリ塾の活動を通じて考えたこと」といった内容で報告を受け、今回のシンポジウムのテーマである協同のビジネス創出について、意見交換を行いました。

 原発事故により、福島県が受けたダメージとそれに立ち向かった県民のレジリエンスすなわち回復力は、それを凌駕するものです。

 悲観するだけに留まらず「やるなら楽しく」という県民性により、震災前の在りし日を偲びつつも、震災以前より良くしたいという気概と覚悟のこもった素晴らしい報告でした。これこそ「ふくしまSTYLEの復興」そのものだと感じました。

 初日のシンポジウムの閉会に当たって、地産地消ふくしまネットの吉川毅一副会長(福島県生活協同組合連合会会長)の挨拶がありました。

 1時間でよくわかるSDGsと協同組合翌30日は、前日のシンポジウムで基調講演をいただいたJCAの阿高あやさんにファシリテーターとなっていただき、9年ぶりに再開する「絆塾」が開催されました。事務局含めて37名の参加でした。

 ブレインストーミングを存分に取り入れたワークショップにしていただき、想像力や自分への問いや仕事の棚卸しなど、現場ではあまり考えないことも考える機会になったようです。塾生たちは、生き生きと自分の考えを発表しあっていました。

 「ふくしまSTYLEの協同のビジネス創出に向けて」という課題設定の後は、JCAが監修した「1時間でわかるSDGsと協同組合」の書籍を大いに活用しながら、①アイスブレイク(自己紹介、所属協同組合紹介、担当歴、昨日の感想)、②一人でやってみよう!SDGs度チェック&取り組みたい上位3ゴールと理由、③グラフィカーとファシリテーターを選び班ごとに優先させたいSDGsを共有、④協同組合間協同で創るビジネスを付箋に個人で書き出す(KJ法)、⑤班内で共有しグルーピング、⑥スライド作成、⑦各班5分ずつポスターセッション&幹事や事務局長による講評といった内容のワークショップが繰り広げられました。

 最後に絆シンポジウム並びに絆塾の全体の閉会挨拶が、以下のように佐藤一夫幹事からあり、終了となりました。

 昨日そして今日の絆塾と2日間、たいへんお疲れ様でした。

 昨日、会場を見渡したら、地産地消ふくしまネットの設立当時のメンバーは、私一人だということがわかりました。一抹の寂しさを感じながらも、皆さんの報告や発表を聞いて、たいへん感動しておりました。

 地産地消ふくしまネット設立当時のキーワードは「身土不二」という言葉でした。

 この言葉は、明治時代に食養学の石塚左玄らが唱えた言葉で「その土地のその季節にとれたものを食べるのが健康に良い」という考え方でした。

 そして、3つのプロジェクトを立ち上げました。

 ひとつは「創る」プロジェクトです。「つくる」は創造の「創る」ということで、新しい価値をつくることです。

 生産者や加工業者などが、一方的に用意してくれるものを消費するのではなく、生産者と消費者が協働して新しい価値を創造しようとする取り組みです。

 当初、私たちは、このことを「絆で創る!ふくしまSTYLE」と名付けて活動してきました。

 ふたつめは、「守る」プロジェクトです。食と産地といのちを守る運動です。

 豊かな食卓とは、たくさんの料理が並んでいるといった物質的な豊かさではなく、食材や食文化など食を通して家族の会話が弾む、食卓を通して次代を担う子どもたちの食育活動を進めようということでした。

 福島水産の守山さんの報告の中にあった「浜のかあちゃん料理教室」は、実は講師の阿高あやさんプロデュースで、地産地消ふくしまネットが取り組んだのが始まりでした。それが、報告にあったような広がりに繋がっていったということです。

 みっつめが、「つなぐ」プロジェクト、「絆塾」です。その第一期生に、事務局の後藤洋子さんがおりました。

 「絆塾」では、福島大学生にも参加いただき、市場調査から素材探し、商品開発、試食を繰り返し、販売方法まで考えるという取り組みを行っています。

 学生が消費者の意見を聞いたり、生産者から苦労話を聞いたりしながら、商品にまつわる物語をつくり上げ、発表しました。食農学類が目指しているフードシステムの原型のような取り組みを行っていました。復興マルシェでもそうしたことが行われていましたが、今回の大学生の発表にも、そうした取り組みがされていることに感動しました。

 「みらいろ女子会」の報告にあった福岡の「エフコープ生協」との包括的連携協定も地産地消ふくしまネットで取り組んだ「ふくしま応援隊」がそのきっかけとなっています。お盆の時期に、福岡に「あかつき」を送るということはとっても難儀でした、グジュグジュになって届いたとかクレームの嵐、謝罪しながら、何度も送り返したことを思い出します。窓口になっていた阿高あやさんには、たいへんな思いをさせてしまいました。

 さて、この2日間、皆さんは、自分は協同組合で働いているということを改めて感じたことと思います。

 しかし、日頃は、どうでしょうか?協同組合で働くことに価値と誇りを感じながら、仕事をされていることはありますでしょうか?

 協同組合で働いてよかったと感じられる場面に遭遇するようなことはありますでしょうか?なかなかないか?まったくないか?仮にそうした場面に遭遇しても気がつかないか?日々、仕事に追われているとそんなことを考える余裕すらないのかも知れません。

 10月17日、25年前にジェノサイド(大虐殺)がありましたが、「アフリカの奇跡」とも呼ばれる経済成長を続けているルワンダの首都キガリで、 ICA、国際協同組合同盟の総会・全体会が、67ヶ国、約1,100名が参加されて開催されています。

 その総会では、「協同組合の10年に向けたブループリント」に続く戦略計画案「第2の協同組合の10年(2020-2030)に向けて人々を中心に据えた道のり」について、各会員から意見表明を求めたそうです。JCAも国内のICA会員の意見を集約して意見を述べ、またJCAの馬場専務が「SDGs12を実現する:食料安全保障と持続可能な生産と消費に貢献する」をテーマとする分科会において、「消費者に安全な食料を供給し、持続可能な農業を推進し、地域を活性化する生協と農協の協力」と題して基調講演を行なったということです。

 後日、皆さんには、事務局から戦略計画やJCAの意見表明など、お配りしていただきます。世界の協同組合のリーダーたちが、何を考えているのか知ることはとても大切なことだと思います。

 さて、その戦略計画案には、「自助、自己責任、民主主義、平等、公平および連帯という協同組合の価値は、今も健在である。投資家所有の営利組織がどれだけ努力しても、これらの価値を自らの文化へ完全に組み込むことはできない。協同組合アイディンティティに関するICA声明にもまた、正直、公開性、社会的責任および他者への配慮という4つの倫理的価値が含まれる。営利目的で投資者所有の企業は、これら4つの倫理的価値を自らが具現化していると主張できるが、実際の行動の多くの場合、その主張を裏切るものである。」との記載がありました。

 ややもすると我々協同組合も同じ過ちをしてはいまいか?

 阿高さんが言っていました「SDGsウオッシュ」に陥ってはいまいか?

 日々やっている仕事は、共済推進であったり、預金獲得であったり、品出しであったり、投資者所有の企業と大差なく、仕事を進めていく上での技術的なスキルアップは、その投資者所有の企業に学ぼうとさえしているのではないか?

 さらに戦略計画案には、協同組合運動が現在有する最大の強みは、その世界的な広がりである。この運動はあらゆる地域や様々な部門に広がっており、またそこには共通のアイディンティティがある。ICAを通じて協同組合運動は、明確に定義され、しっかりとつながったグローバルネットワークを形成している。

 しかし、現在の協同組合運動にとって最大の弱みは、ICAグローバルネットワークの中でさえも、協同組合間の協同や、研究・教育への資源共有に向けたコミットメントが限定的であること。および大規模な協同組合の参加が著しく欠けていることである。

 同時に、すべての協同組合にとって大きな機会が訪れている。

 つまり、連携の新たな機会、新世代の情報技術ITや共通の ITプラットフォームを通じた事業のつながりや情報共有、若者や女性による包摂的な協同組合ネットワークへの積極的な参加、および社会的連帯経済における新たな事業モデルである。

 これらはすべて、協同組合の拡大や影響力増大の可能性を示唆するものである。

 ICAは教育、研究および連携を通じて、このような機会を大幅に拡大できる。

とありました。

 地産地消ふくしまネットが主催した「第95回国際協同組合デー記念フォーラム」において、国際ジャーナリストの堤 未果さんは、「協同組合が普通の企業と普通のビジネスと同じ土俵で闘う必要などない。日本の農協は既に世界のグローバルビジネスと堂々と渡り合って一目置かれている。だから狙われてもいる。あらゆるものに値札をつける新自由主義の流れに対抗するもうひとつの流れが、いま世界中で起きている。『今だけ、カネだけ、自分だけ』に対抗するのが、協同組合の『おたがいさま』の価値観。一人でも多くの日本人がこの宝ものに気づき、いまの世界の流れの中で日本の農業や農協がいかに誇るべき存在かを知って欲しい。」と言っておられました。

 そして、今年開催した「第97回国際協同組合デー記念フォーラム」では、「今だけ、カネだけ、自分だけ」の言葉の元祖、東京大学大学院鈴木宣弘教授が、「3だけ主義の対極に位置するのが命と暮らしを核にした共助・共生システムである。逆に見れば、一部に利益が集中しないように相互扶助で小農・家族農業を含む農家や地域住民の利益・権利を守り、命・健康、資源・環境、暮らしを守る協同組合組織は、3だけ主義には存在を否定すべき障害物である。そこで、既得権益・岩盤規制と攻撃し、ドリルで壊してビジネスとお金を奪って、自らの既得権益にして、私腹を肥やそうとする。共助組織と自治体の政治・行政が核となって、各地の生産者、労働者、医療関係者、大学関係者、関連産業、消費者を一体的に結集して、地域を喰いものにしようとする人たちを跳ね返す、食と暮らしを守る市民ネットワークを強化し、徹底的に支え合えば、未来は開ける。」と言っておられました。

 みなさん、協同組合で働くことにもっと価値と誇りをもって、仕事しませんか?

 そうした仕事の先には、協同組合で働いてよかったと感じられる場面がきっとあるはずです。

 地産地消ふくしまネットは、組織の強みと弱みをしっかりと理解しながら、福島大学食農学類と連携し、国際協同組合デー記念フォーラム、絆シンポジウム、絆塾やあらゆる機会を通じて、皆さんが協同組合で働くことに価値と誇りをもって、仕事ができるようお手伝いをさせていただき、世代間継承の問題に正面から向き合っていきたいと考えています。

 また、皆さんとお会いできることを楽しみに、少し長くなりましたが、これをもって絆シンポジウム、絆塾の全ての日程を終了とさせていただきます。

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